私を物理の世界に誘い込んだ本たち

 

仕事が始まって忙しい毎日に飲み込まれてしまう前に、いろいろと整理したいと思い立って、
だから今日は、私を物理の世界に誘い込んだ本たちを紹介したいと思う。

専門的な書籍や教科書というより、一般向けの書を並べていこうと思うので、ゆるゆるお付き合いいただけたら嬉しい。

 

 

宇宙星座 (フレーベル館, 1994年)


小さい頃の私は一人で遊ぶのが好きで、特にお気に入りの過ごし方は小学館が出しているような大型本の図鑑を読むことだった。動物、恐竜、植物、様々あったがその中でも宇宙の本は親にねだって買ってもらった。この本にはまだ冥王星が載っていて、既に絶版になっており今やアマゾンで3円で売られているという始末だが、ボロボロになるまで読み漁ったのを覚えている。思い返せば物理との出会いはこの本だったのかもしれない。破れたりなくなってしまっているページもあるが(どんな読み方だ)今でも実家の本棚に大切に保管されている。

単純な脳、複雑な「私」 (池谷祐二, BLUE BACKS, 2013年)


中高時代に私に大きく影響を与えたのは、脳科学との出会いであった。特に池谷祐二さんの本は伝え方が非常に上手で学生にとってもわかりやすく、興味を掻き立てられたことを覚えている。意識とは何かを考えさせられる、名著の一つである。この本が私にとって物理に深みを与えたのは、後に大学で田崎晴明先生の現代物理学という授業でDirected percolationという現象についての講義を受けていたときだった。脳神経における情報伝達はシナプスによる単純なモデルだが、そういう無機質なモデルであたかも自由意志のような現象が導かれるということに感銘を受けたことを覚えている。

この際なので、脳科学分野における名著をもう人つ紹介する。下に紹介する本は、脳や生命がいかにでっちあげの危うい、しかし時折驚くほど精巧な作りになっているのかということついてわかりやすく解説された本である。ジェンダーについて科学的な視点から考えさせられる本でもある。

脳はいいかげんにできている (David J. Linden 著, 夏目大 訳, 河出出版, 2009年)

 

宇宙の扉をノックする (リサ・ランドール, NHK出版, 2013年)


私は地方の平凡な共学の公立高校に通っていたのだが、その高校の図書館の地下には、ほとんど誰も来ないような書庫があって、そこは私にとって最高の出会いの場所(?)、お気に入りの隠れ家だった。こうやって書いていると私は高校時代友達がいなかったのかなと心配になってきたが、そんなに寂しい思いをした記憶はないのでそうでないと信じている(笑)。ともかく、そのころ流行っていた数学ガールはもちろんのこと、「生物と無生物のあいだ」も読んだし、書庫には大学で習うような代数の本から割とマニアックな幾何論の本まで、何でもとは言えないが様々あった。誰も借りないので独占した(笑)。Newtonなんかも置いてあって、結構良い図書館だったんじゃないかと思う。
さて、その中で特に高校時代に私に大きな影響を与えたのは、リサ・ランドールさんの「宇宙の扉をノックする」である。読後すぐに「ワープする世界」も読み、後に「ダークマターと恐竜絶滅」を発売開始と同時に購入した。正直ちゃんと物理を学ばないと、数学をやっている人にとってはあまり楽しめない本かもしれないが、この「宇宙の扉をノックする」はそのころ世間を賑わせていたヒッグス粒子についてわかりやすく書かれた書籍で、私にとって衝撃的な素粒子との出会いだった。私は素論は専門にしなかったが、後に大学で超伝導の理論を学んだとき、思いがけず繋がって感動することになる。高校で配られる教科書には素粒子の話はほとんど出てこないので、駅前の街で一番大きな本屋に行って専門書を買いに行ったことを覚えている。
ちょうどこのころ、バングラディシュ人の知り合いにたまたま貰ったホーキング博士の”A Brief History of Time”も、宇宙物理や相対性理論との出会いだった。ちなみにこの書籍について以前こちらの記事に関連した考察があるのでご興味があれば。



ファインマン物理学シリーズ


ミーハーと怒られそうだが、高校から大学一年にかけてファインマン物理学にハマった。もれなく全巻揃え今も一人暮らしのアパートの本棚の上の段で燦然と輝きを放っている(こんな女子大生の部屋嫌かもしれない)。ファインマン博士は分野や境界に拘らない人で、世界を自分の目で見ているから、一つ一つの章に化学や工学、生命科学的な話も盛り込まれていてとても面白かった。例えば光学のパートでは色彩と動物の目の話が総合的に議論されていて面白い。だいたい物理屋だから物理の枠組みでしか考えないなんて、宇宙を理解するという目的から考えておかしな話である。そのころ大学で習っていた線形代数がいかに重要な概念かということもこの時期に理解できて幸運だったと思う。学位論文で彼の名を引けたことが嬉しい。何度も読み返す、私にとって大切な本。数学を学ぶ大学前期の学生におすすめである。

 

教科書たち

結局一番面白かったのは講義や教科書なので、やっぱり特にお世話になった基礎的な教科書を並べることにする(笑)。
統計物理、量子力学、固体物理、電磁気学がどれも満遍なく面白かったが、量子力学は、猪木川合よりなぜか裳華房を読み込んだ。J.J.Sakuraiの現代量子物理学も良い教科書だった。講義は、沙川先生のが面白かった(分かる方にしか伝わらないと思いますがすみません)。統計力学は教科書よりも講義がすごく面白く、小芦先生や今井先生のは熱心に勉強したが、永長先生のはついていけなくなった。固体物理の教科書は結局キッテルもマーミンも両方買って、どちらもよく読んだ。野村健一郎さんのトポロジカル絶縁体はお世話になって、他にも本やReviewはたくさんお世話になったけれど、専門だったのでこれ、というものをあげるのは難しい。線形代数はとても重要で深く理解する必要があったので、結局一年生のときに買わされた教科書を何度も読み直すハメになった。学科の必修だった物理数学という名の線形代数演習みたいな内容の講義がとても面白かった。結局物理を学ぶ者にとって演習が一番きついけど鍛えたれる場所なのだと思う。場の理論を学ぼうと思って、学科の友達とPeskinを読んだが、分厚く難しかった上に、みんな賢かったのでだいぶ大変だった。何も参考にならない紹介になってしまったがこれらが特に印象に残っている教科書たち(?)である。






Quantum computing in the NISQ era and beyond

John Preskill, “Quantum Computing in the NISQ era and beyond“, Quantum 2 79, 2018.
大学で量子計算という分野に出会ったが、個人的にこの記事で最初に量子コンピュータというものの実態が分かった気がする。
ちなみに以前こちらの記事で解説しているのでご興味があれば。

 

最後に生命科学系で、私が学生時代に出会った印象に残っている本を二冊紹介する。(物理関係ない)

ミトコンドリアが進化を決めた(みすず書房, ニック・レーン 著, 夏目大 訳, 2005年)


私は生物は専門でないので、専門の人には怒られてしまうかもしれないが、こちらの本は専門的な内容があまりごまかさずわかりやすく書かれていて、面白かった。物理の人間だからか、生命科学の話でも、エネルギーがどう動くのかということに興味を持ってしまいがちだが、こちらの本はそんな人にうってつけの内容だ。研究結果の意味を考察し議論できるのは、一般向け書籍ならではの醍醐味である。ニック・レーン博士の書籍では、他にも「進化の跳躍」「生命・エネルギー・進化」がおすすめである。

タコの心身問題(みすず書房, ピーター・ゴドフリー・スミス 著, 夏目大 訳, 2018年)



いよいよ何の話だという感じかもしれないが、こちらも私のお気に入りの一般向け生物系科学本である。夏目大さん訳の科学本には「あなたの人生の科学」「音楽の科学」など数々の名著があると思うが、こちらは我々哺乳類から進化の歴史的に割と昔に分岐した頭足類たちの持つ、高度に発達した器官や社会的習性について考察した本である。

 

 

以上、最終的に何を紹介したかったのかよくわからない感じになってしまったが、私を物理・科学の世界に誘い込んだ本たちの紹介だった。次回はテクノロジー系・ビジネス系で印象に残っている本もまとめてみたい。
今後、どんな本に巡り合うのかと思うと、想像もできないが、わくわくと胸が踊る。

みなさんの大切な本は何だろうか。

 

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