夏の盛りに考えること

 

どうせどこにも出かけないのだけれども、

永遠に続くように思われた、じっと屋内で雨に耐える梅雨が明けて、

気がつけばもうすっかり、夏の盛りである。

 

うだるような日中の暑さと、この世の終わりのような夕立の雷に怯える日々のなか、

なんとなく何も手が付かないある休日に、

ばかみたいに元気な蝉の鳴き声を、ぼんやり聴いている……

 

それにしても、蝉はあんなに小さくて軽い体のどこから、こんな爆音を出せるのだろうか。。。。

関係なすぎるが今回は蝉の(主に)発声機構に関する考察を書きたい。久々の投稿なのに意味不明な題材でごめんなさい。(笑)

 

少々お付き合いいただけたら嬉しいです。(*´ω`*)

 

※素人ですので誤りがありましたらすみません。是非ご指摘ください。
 

 

蝉と秋の虫

蝉の成虫は薄命というが、子供の頃に力尽きた蝉を持ち上げて、あまりの軽さに驚いた方も多いのではなかろうか。

雄の蝉の腹部は殆ど空気で満たされており、tymbal と呼ばれる堅く厚い角皮が腹部の左右についている(図1参照)。tymbal は大きな筋肉と接続しており、筋肉が収縮すると tymbal が変形される。tymbal には数本のひだがついていて、伸縮によってこのひだが折れたり伸びたりすることで、ひだの数だけのパルス音が発生する。のだそうである。[1]

 

図1 蝉の雄の腹部断面図。左右についたtymbalに、筋肉が接続している。(wikiより)

 

 

一般にコオロギや鈴虫など鳴く虫には羽を擦らせることで発声するものが多いが、蝉の場合は空気で満たされた腹部の共鳴器によって音を増幅することで、あのような爆音を出している。

 

音を共鳴させて鳴くという意味で、蝉の発声機構は人間の声帯や鳥類の鳥菅と同様といえる。魚でも、ホウボウなど浮き袋を使って同様に共鳴器を用いて発声するものもあるそうだ。

昆虫の中で蝉のように大きな音を発声するできるものは珍しいが、一部蛾など、同様の機構で人間に聞こえない高周波数の音を発声する昆虫もいるそうである。[2]

 

声帯と同様共鳴室で発声しているということは、蝉にヘリウムガスを吸わせれば、媒体の密度が変化し音速が変わるため、共鳴周波数は変化して蝉の声も変わるということだ。やらないけれど。

 

蝉の飛翔筋

 

昆虫の飛翔能力を支えているのは飛翔筋とよばれる筋肉だが、飛翔筋は全て脊椎動物の骨格筋と同じ横紋筋で出来ている。[2]

昆虫の飛翔筋には主に二種類あり、一回の神経インパルスと一回の収縮弛緩とが同期する同期型と、一回の神経インパルスで複数の伸縮が起こる非同期型がある。

 

前者は蝶やバッタ、後者はハチやハエなど、より小型で、高い周波数の羽ばたきが必要な昆虫が該当する。

 

非同期型の筋肉を持つことで、中枢神経の負担は軽減され、ミツバチなど一秒間に250回にも及ぶ高速での羽ばたきが可能になるので、

非同期型は昆虫の飛翔能力を飛躍的に伸ばした進化の産物といえるが、

筋肉のエネルギー消費も多くなり、飛翔筋に求められる用件・コストも高くなる。

 

非同期型の飛翔筋は、タンパク質同士の結合が強固で、大きく伸縮することが難しいので、

ハチなど小型の昆虫の羽ばたきに適しているのだが、

極めて規則的にタンパク質同士が配列している。

 

タンパク質分子同士は、それぞれの結合が最も多くなるような形で、マイクロメートルオーダーの六角格子状に並んでおり、

周期構造をx線マイクロビームで確認することができる。[3]

自分は生物に全く詳しくないが、タンパク質分子がx線回折を明解に確認できるほど規則的に配置した大きな組織を作ることができるって、結構すごいことではなかろうか。

 

昆虫はタンパク質が豊富、とよく言われるが、なるほど昆虫の筋肉ってすごいものである。

 

さて、蝉の話に戻ると、

蝉は非同期型に当たるカメムシ目に属するが、蝉の tymbal を動かす tymbal mascle は同期型に分類される(非同期型の説明を散々しておいてすみません)。[2]

しかしながら、非同期型との類似点が多く見られ、x線でもぼやけた像が見えるそうで、

非同期型からの退化(?)の過程という説もあるそうである。

 

蝉の場合は、タンパク質同士の結合の張力を犠牲にすることで速い振動が可能になっていて、

振動(鳴き声)の周波数は筋肉の収縮弛緩回数にひだの数をかけて、3k~10kHz程度になる。

 

 

蝉の鳴き声の周波数

 

10kHz程度、という蝉の鳴き声の周波数は、残念ながら人間の可聴域内である(20~20kHz程度)。

ミンミンゼミやツクツクボウシ、アブラゼミは人間の可聴域より高めの周波数帯も出すそうだが、

クマゼミは 2k~10kHz、しっかり可聴域で鳴くそうなので、私たちにとって大変大きなお声に感じられる。[4]

 

しかしながら電話はこの音域は拾わないそうで(人の話し声は500Hz程度)、

なので、蝉の鳴き声のうるさい場所から電話しても、ローパスフィルタ(?)がかかるというか、ノイズカットされる。良かった。

 

ところで、あんなに大声で鳴いていたら、鳥などの天敵に瞬殺されそう、と思われるが、

この周波数帯は天敵にとってノイズとなるため、都合が良いと考える人もいるそうである。[5]

 

なるほど、冒頭で、あんなに小さい体のどこから、と言ったが、

適切な周波数の共鳴器を作るために、あの小さな体が最適ということなのだろう。

 

お盛んな時間帯

そういえば、蝉には種毎鳴く時間帯というのものがあるが、

変温動物である蝉の筋肉運動には、適切な湿度や温度があるのだろうか。

 

さらに、蝉は集団で同期して鳴く習性があるそうで、一匹が鳴きだすと次々他の蝉も鳴きだす性質がある。[5]

確かに、アブラゼミやミンミンゼミは、一匹で寂しく鳴いているというより、林の中で雨のように大勢で鳴いているイメージが強い。

 

ここ数年、ほんとうに暑い猛暑日や熱帯夜が多く感じるが、気温が上昇したら、夜にも蝉が大雨のように鳴くのだろうか。

安眠はなんとしてでも守り抜きたいものである。

 

 

随分とまとまりのない記事になってしまった気がするが、最後にもう少しだけ、考察させていただく(笑)。

蝉にとって鳴き声という音の情報は、繁殖のためにこれほど重要なわけであるが、

私たちが外界から取り入れている情報の大部分は視覚情報で、

 

視覚には空間的な広がりや色があるという点で、情報量が多く、一部可逆なものもある。

比較し、音は(指向性はあるにせよ)一次元的で、しかも前にしか進まない(時間という意味・音源からの拡散であるという点で)情報である。

それほど、蝉にとって重要な情報はシンプル で、蝉の成虫の行動から読み取られる目的は明解なのだ。

 

 

これ以上夏が暑くなり、セミが夜中まで mating call をしないことを祈りながら、そんなことを考えるお盆なのであった。

 

参考

[1] 岩本裕之, 生物物理 58(5),245-247(2018)

[2] https://www.jstage.jst.go.jp/article/biophys/50/4/50_4_168/_pdf

[3] http://www.spring8.or.jp/ja/news_publications/research_highlights/no_30/

[4] http://www003.upp.so-net.ne.jp/cicada/hakei.html

[5] https://www.prevention.com/life/a32651359/cicada-sounds/

[6] https://www.dk-iikurashi-navi.com/portal/seikatsu/content/20160823

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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